ビジネス・経済
LVMHの買収戦略――ラグジュアリー帝国を築いたM&Aの舞台裏
公開日: 2025-05-08
¥150(税抜き)
税込み: ¥165
内容紹介
ベルナール・アルノー率いる世界最大の高級ブランドグループがどのようにしてティファニーやブルガリをはじめとする名門メゾンを「買って、育て、輝かせてきたか」を立体的に描き出す一冊です。巨大コングロマリットの誕生秘話から最新のDX戦略、買収後100日でブランドDNAを守りながらシナジーを生む統合プロセスまで、30年以上にわたる成功と失敗の軌跡を豊富な年表・図解・現場インタビューで紐解きます。ラグジュアリー市場を牽引する決断のメカニズム、文化と財務を両立させるPMIの実践知、そしてサステナビリティや新興富裕層の台頭がもたらす次のM&Aシナリオ――本書はそれらを体系化し、「ブランド価値を最大化するとは何か」という問いに実務家レベルで答えます。ファッション業界の経営者・投資家はもちろん、ブランドの舞台裏を覗きたいファンまで、読む者に“次の一手”を啓示する決定版リファレンスです。
本文サンプル
- 序章 LVMHという巨人
- 0-1 世界最大のラグジュアリーブランドグループ
- 0-2 “ラグジュアリーの王国”を築いたM&A戦略
- 0-3 本書の目的と構成
- 第1章 ラグジュアリー業界の全体像
1-1 ラグジュアリーブランドの定義と特徴
1-2 世界のラグジュアリー市場規模
1-3 ラグジュアリー消費の変遷と新潮流
1-4 デジタル化と顧客体験の変化 - 第2章 LVMHの歴史と歩み
2-1 ベルナール・アルノーのビジョン
2-2 モエ・ヘネシーとルイ・ヴィトンの統合
2-3 主要ブランドの買収年表
2-4 失敗も成功の糧に——過去の試行錯誤 - 第3章 LVMHのビジネスモデルと買収戦略の基礎
3-1 “マルチ・ブランド戦略”の強み
3-2 ブランド・アイデンティティの尊重
3-3 経営トップによる決定プロセスの秘密
3-4 買収先の企業評価とブランド力 - 第4章 ブランドポートフォリオとシナジー創出
4-1 ファッション&レザーグッズ部門
4-2 ワイン&スピリッツ部門
4-3 香水&コスメ部門
4-4 ウォッチ&ジュエリー部門
4-5 セレクティブリテイリング、その他部門
4-6 クロスセルとイメージ向上の相乗効果 - 第5章 買収後の統合プロセスとマネジメント
5-1 買収先ブランドとの文化融合
5-2 役員人事と経営統合のモデル
5-3 生産拠点・サプライチェーンマネジメントの最適化
5-4 ブランド価値の維持とコミュニケーション戦略 - 第6章 グローバル市場攻略と地域拡大戦略
6-1 欧米市場の深耕と新興国への展開
6-2 中国・アジア市場の重要性
6-3 オムニチャネル戦略とECサイトの活用
6-4 ローカル顧客体験の強化と高級路線の住み分け - 第7章 M&Aにおけるリスクと課題
7-1 買収価格の高騰と投資リスク
7-2 ブランド乗っ取り・価値毀損の懸念
7-3 世界経済の不確実性と景気後退リスク
7-4 競合の激化と差別化戦略の必要性 - 第8章 主要買収事例の分析
8-1 「ブルガリ(Bvlgari)」買収
8-2 「ティファニー(Tiffany & Co.)」買収
8-3 「ロエベ(LOEWE)」のブランド再生
8-4 化粧品・コスメブランド拡充の事例
8-5 伝統的メゾンとの連携と新規事業 - 第9章 競合他社との比較とラグジュアリー業界の構造
9-1 ケリング(Kering)の事例
9-2 リシュモン(Richemont)と時計業界の買収動向
9-3 独立系メゾンとの共存と差別化
9-4 プレミアムブランドとラグジュアリーブランドの境界 - 第10章 LVMHの未来とこれからのM&A戦略
10-1 デジタルトランスフォーメーション(DX)の加速
10-2 サステナビリティと企業価値の両立
10-3 新興富裕層の取り込みと市場の多様化
10-4 次なる買収候補とグループの進化 - 終章 LVMHが示すラグジュアリービジネスの未来
- 成功と失敗から読み解くラグジュアリーM&Aの本質
- グループ経営の真価
- ラグジュアリーはどこへ向かうのか
序章 LVMHという巨人
0-1 世界最大のラグジュアリーブランドグループ
- シャネルやエルメスといった単独ブランドが世界のラグジュアリーマーケットを彩るなか、ひときわ異彩を放つ巨大企業がある。フランスを拠点とするLVMH(エル・ヴィ・エム・エイチ、Moët Hennessy Louis Vuitton SE)だ。世界的なリサーチ会社の調査においても、ラグジュアリーセクターのトップ企業として度々名を連ね、グループ全体の時価総額が非常に高い水準にあることでも有名である。
- LVMHは、フランスの象徴的ブランド「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」や「ディオール(Dior)」、「モエ・エ・シャンドン(Moët & Chandon)」など、いずれも高級ブランドとしての認知度が抜群に高い企業群を傘下に抱えている。さらに、コスメや香水、美術館、ホテルなど多角的に事業を展開し、ラグジュアリー業界の“総合商社”とも言える存在だ。
- では、なぜLVMHはここまで多くの有名ブランドを傘下におさめることができたのか。その背景には、創業者であるベルナール・アルノーの優れたビジョンと、戦略的なM&A(合併・買収)による拡大路線がある。本書では、LVMHがいかにして業界の雄へと上り詰めたのか、その買収戦略を中心に分析し、ラグジュアリーブランドビジネスの本質に迫っていく。
0-2 “ラグジュアリーの王国”を築いたM&A戦略
- 世の中にはM&A戦略に長けた企業が数多く存在するが、ラグジュアリー業界でここまで広範囲かつ成功裡に事業を拡大してきた例は、そう多くはない。ケリング(Kering)やリシュモン(Richemont)といった競合グループも確かに強力だが、LVMHほど多様なポートフォリオをまとめあげ、なおかつブランド価値を落とさずに成長させている例は稀だといえる。
- LVMHのM&A戦略は、単なる企業買収にとどまらない。
- 事前の徹底したブランドリサーチによる買収対象の選定
- 買収後の迅速なブランド統合とノウハウ提供
- ブランド独自のアイデンティティを尊重しつつグループ全体の相乗効果を狙う
- グローバル規模の販売網を活用した事業拡大
- このようなステップを踏むことで、LVMHは単なる寄せ集めではなく、グループ全体で高いブランド価値を維持する“王国”を築き上げてきたのである。
0-3 本書の目的と構成
- 本書『LVMHの買収戦略』は、主に以下のことを目的として執筆されている。
- LVMHの企業概要と歴史
- どのような背景やビジョンをもって設立されたのか
- どのような買収の流れを経て、現在のグループに至ったのか
- LVMHのM&A戦略分析
- どのようにして買収候補を選定し、買収後にブランドをグループへ統合しているのか
- どのようなシナジーを狙い、実際にどのような成果を上げたのか
- LVMHが成功する要因
- 競合グループにはない強みは何か
- LVMH流の企業文化と経営手法
- ラグジュアリー市場の未来とLVMHの展望
- デジタル時代におけるハイブランド戦略
- 新興国・新興富裕層市場の開拓とリスク
- 今後のM&Aの方向性
- 本書は、ラグジュアリーブランドに興味を持つ一般読者の方から、企業のM&A戦略に興味を持つビジネスパーソンまで幅広い層を想定している。専門用語についてはなるべく噛み砕いて解説し、誰もが理解しやすいよう配慮している。
- さらに、読者の中には「ラグジュアリーブランドは好きだが、そもそもなぜあんなに高価な商品が売れるのか」「M&Aによってブランド価値は下がらないのか」といった素朴な疑問を持たれる方もいるだろう。こうした疑問に応えることで、LVMHの買収戦略とラグジュアリービジネスの核心に迫りたいと考えている。
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